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GBS(B群溶血性連鎖球菌)検査と予防
GBS
(B群溶血性連鎖球菌)
検査と予防

はじめに

GBS(B群溶血性連鎖球菌)は膣内の常在菌で、妊婦様自身に害のあるものではありませんが、分娩時に赤ちゃんに感染すると時に赤ちゃんの状態が非常に悪くなることがあります。(髄膜炎および敗血症に関与する主な起因菌とされています) そのため、分娩時に、十分対策を立てる必要があります。

当院のGBS
(B群溶血性連鎖球菌)検査

B群溶血性連鎖球菌(Group B Streptococcus,GBSまたはStreptococcus agalactiae)は新生児における髄膜炎および敗血症に関与する主な起因菌の一つであるとされています。GBSは、妊婦様の腟や直腸に常在し、妊婦様の保菌率は10~30%である。赤ちゃんが、GBS感染症を発症するのは1%前後であり、発症率は低いのですが、ひとたび発症すれば急速に重篤化し、死亡や後遺症に至ることも少なくないといわれています。2002年に改定された米国CDC(Centers for Disease Control and Prevention:疾病管理予防センター)より発表された、「周産期におけるB群連鎖球菌感染症の予防に関するガイドライン」では、妊娠35~37週のすべての妊婦に対して腟と腸のGBS検査を行い、結果に基づく管理をすべきであると改定されました。
日本ではGBS管理に関する関連学会からのガイドラインの提示はないため、現状では米国CDCのガイドラインに沿った管理が適切であると当院では考えています。

GBSスクリーニングの方法

対象:妊娠35~37週のすべての妊婦様 方法:培養検体は膣鏡を用いず、膣下部、続いて直腸内のスワブを採取する(同一スワブでもよい。) ペニシリンアレルギーの妊婦様の場合はclindamycinとerythromycinの感受性検査を追加します。 今回の妊娠中でGBS細菌尿があると診断された妊婦様と、胎児のご兄弟が症候性のGBS感染症であった妊婦様に関しては、GBS陽性扱いとなるため採取はいたしません。ただし、直腸の培養を施行しないとGBS偽陰性となることがあり、注意が必要です。 なお、GBS培養陽性妊婦様に対して、妊娠中には原則として治療は実施いたしません。GBS培養陽性でも前期破水、早産などの頻度が陰性妊婦様と有意差がないこと、さらに治療して陰性となっても、再び陽性となることが多いため、当院では妊娠中の治療は行っておりません。米国CDCガイドラインにおいて、妊娠35~37週で膣内と直腸から培養スクリーニングを施行する理由として下記があげられます。

  • 持続続性に陽性となったり、一過性に陽性となったりする場合があるため、分娩5週間以上前の採取では分娩時の培養結果と相関しない。
  • 分娩時迅速培養の結果は、未だ信頼性が低い。
  • 抗生物質投与の効果が見られたStudyのGBS培養の時期が35~36週であった。

抗生剤投与のメリット
(新生児GBS感染症の予防)

GBS保菌妊婦様の赤ちゃんは、高率にGBSが分離されますが(40~73%)、そのうちGBS感染症を発症するのは1%前後である。発症率は低いが、ひとたび発症すれば急速に重篤化し、死亡や後遺症に至ることも少なくないため、発症前の予防が大切とされています。
ガイドラインに沿った、分娩時の抗生物質の使用によって1998年の米国において約3900例の新生児早発型GBS感染症が、また約200例の新生児死亡が予防されたと報告されています。2002年のガイドライン改定以降のCDCのレポートでも罹患率はさらに低下しており、2003年の新生児早発型GBS感染症発症率は0.32/1000であり、前年度に比して34%の低下が認められたと報告されている。

新生児GBS感染症は分娩時の垂直感染によって引き起こされます。
日齢7日以前の早発型(約80%)と、
日齢8日以降の遅発型(約20%)に分類されます。

・早発型(Early onset disease)(約80%):
出生直後から呼吸障害が発症し、6~12時間で敗血症に至る。
時に、髄膜炎・骨髄炎・敗血症性関節炎を起こすこともある。

・遅発型(Late onset disease)(約20%)
生後1週間から3ヶ月で髄膜炎の臨床像で発症する。

分娩中の
予防的抗生物質投与の適応

妊娠35~37週のすべての妊婦様に対して、膣内と直腸からGBS培養スクリーニングを施行します。
(胎児のご兄弟がが症候性のGBS感染症であった場合、今回妊娠中にGBS細菌尿が認められた場合は、抗生剤投与の適応であるので採取しなくても良い。)

分娩中の予防的抗生物質投与の適応となる場合 分娩中の予防的抗生物質投与の適応とならない場合
前児が症候性のGBS感染症であった場合 以前の妊娠中にGBSスクリーニング陽性(以前の妊娠時のみGBS陽性で、今回はGBS陰性の場合)
今回妊娠中にGBS細菌尿が認められた場合 陣痛発来前で、かつ未破水の選択的帝王切開
(今回妊娠中のGBSスクリーニング検査の結果にかかわらず。)
今回妊娠中にGBSスクリーニング陽性
(陣痛発来前で、かつ未破水の選択的帝王切開は除外)
膣内と直腸からGBS培養が陰性であった場合
GBS培養が行われていない場合は分娩時の臨床危険因子により管理するアプローチとなる。
Risk-Based Approach,CDC1996と同じで、下記が適応となる。 (下記の危険因子が認められても適応にならない。)
Ⅰ:妊娠37未満の分娩 Ⅰ:妊娠37未満の分娩
Ⅱ:破水後18時間以上経過している場合 Ⅱ:破水後18時間以上経過している場合
Ⅲ:分娩中の38℃以上の母体発熱が認められる場合 Ⅲ:分娩中の38℃以上の母体発熱が認められる場合

【CDCガイドライン2002より引用】

予防的抗生物質投与の方法

推奨法
ペニシリンG:初回500万単位静注、以降分娩まで4時間毎に250万単位静注
代替法
アンピシリン:初回2g静注、以降分娩まで4時間毎に1g静注
ペニシリンアレルギーがある場合

  • アナフィラキシーのリスクが高くないとき
    セファゾリン:初回2g静注、以降分娩まで8時間毎に1g静注
  • アナフィラキシーのリスクが高いとき
    クリンダマイシン:900mgを分娩まで8時間毎に静注
    エリスロマイシン:500mgを分娩まで6時間毎に静注
    クリンダマイシンまたはリスロマイシンに耐性、もしくは感受性不明なときは、バンコマイシン:1gを12時間毎に静注

37週未満の早産時の予防対策

明らかな早産へのリスクを伴う、37週未満の陣発または破水の場合

  • GBS培養未検査の場合:
    GBS培養施行と同時に、ペニシリン投与開始。48時間でGBSの発育が認められなければ、ペニシリン中止。GBS陽性ならば(2)へ。
  • GBS陽性:
    48時間後以降も早産治療中はペニシリン投与継続とし、分娩時も投与。
  • GBS陰性:
    GBS感染予防は行わない。

【CDCガイドライン2002より引用】

具体的対応の一例
(施設によって異なります。)

基本的にはCulture-Based Screening Approach(細菌培養によるスクリーニング)を用いて、GBSの予防を行うが、GBS陰性であっても臨床危険因子を伴う場合には予防的抗生剤 投与を行う、Combined Approach(Culture-Based Screening Approach+Risk-Based Approach)の形式をとる。をとっている。膣培養偽陰性の可能性があるからである。以上CDCガイドラインを中心に述べたが、Combined Approachの一例として、対応の実際を下記にまとめた。

分娩中の予防的抗生物質
投与の適応

  • 前児が症候性のGBS感染症であった場合
  • 今回妊娠中にGBS細菌尿が認められた場合
  • 今回妊娠中にGBSスクリーニング陽性(陣痛発来前で、かつ未破水の選択的帝王切開は除外される。)
  • 妊娠37未満の分娩(培養が陰性であっても)
  • 破水後18時間以上経過している場合(培養が陰性であっても)
  • 分娩中の38℃以上の母体発熱が認められる場合(培養が陰性であっても)

投与方法

ビクシリン1g:6時間毎 分娩まで

文献

  • Prevention of perinatal group B streptococcal disease.Revised guideline from CDC.MMWR Recomm Rep 51(RR-11):0-22,2002
  • Prevention of early-onset group B streptococcal disease in newborn.Obstet Gynecol 100:1045-1412,2002
    ACOG Committee Opinion NO.279
  • 渡辺典芳、B群溶血性レンサ球菌感染症.周産期医学必修知識2006,Vol.36増刊号:135-137
  • 尾見裕子 北川道弘、妊娠中のGBS対策.周産期治療 vol.88 no2-2004/2
  • 三鴨廣繁・他、周産期におけるB群連鎖球菌感染症の予防に関するCDCの改訂ガイドライン、化学療法の領域 Vol.22,S-1,2006
  • 鈴木俊治 高橋 肇 山口 暁、最近のGBS感染症の動向、産婦人科の世界 Vol.57 No.12 2005 1071-1078
  • 池田申之・他、GBSと妊産婦管理、産婦人科治療 vol.86 no.4-2003/4 830-834

CDCのガイドラインに関して
(現在は改定されています)

1996年に発表された周産期GBS感染症予防のCDC・ACOGのガイドラインでは

  • Risk-Based Approach:スクリーニング検査を行わないで、分娩時の臨床危険因子により管理するアプローチ 危険因子とは、Ⅰ:妊娠37週未満の分娩、Ⅱ:破水後18時間以上経過している場合、Ⅲ:分娩中の38℃以上の母体発熱が認められる場合である。
  • Culture-Based Screening Approach:スクリーニングに基づくアプローチ(細菌培養によるスクリーニング)

上記の二つのうち、いずれかの予防戦略を選ぶというものであった。その後のデータ解析の後、2002年8月にCDCガイドラインが改定され、Screening Approachのほうが有用であるとされ、妊娠35~37週のすべての妊婦に対して腟と直腸内のGBS検査を行い、結果に基づく管理をすべきであるとされた。(Effectiveness of the Risk-Based Approach Versus the Screening Approach)
*ACOGも2002年12月にCommittee OpinionとしてCDCガイドラインを支持している。

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